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コラム

Column

Oxytherm+R および Oxygraph+ を使用した細胞酸素消費速度(OCR)と細胞外酸性化速度(ECAR)の同時測定アプローチ

共同研究・開発: ダリオ・ドメニコ・ロフルメント博士、クラウディオ・ロフルメント氏、ニコラ_エリオ_ロフルメント教授(イタリア、サレント大学 DiSTeBA)

Oxytherm+R および Oxygraph+ を使用した細胞酸素消費速度(OCR)と細胞外酸性化速度(ECAR)の同時測定アプローチ

はじめに

細胞研究に関する多くの学術出版物において、細胞代謝の特徴付けや細胞の完全性・効率を評価する有効なパラメーターとして、酸素消費速度(OCR)と細胞外酸性化速度(ECAR)の値が頻繁に報告されています。従来、これらを測定するには蛍光プローブや専用のインキュベーション媒体を用いたシステムが主流でしたが、実験終了時に複雑な終点滴定ワークフローを必要とするなど、コストと手間の面で課題がありました。

この度、Hansatech Instruments社の高感度酸素電極システム(Oxytherm+R および Oxygraph+)にガラスpH電極を組み合わせることで、同じ実験チャンバー内でOCRと細胞外pHフラックスの両方を直接、リアルタイムに並行測定できる革新的な手順が開発されました。これにより、滴定に頼ることなく、pH変化を定量的なECARやプロトン産生速度へとシンプルに変換することが可能となります 。

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図:一体型ガラスpH電極を組み合わせたOxytherm+R / Oxygraph+ 測定プラットフォーム

OCRおよびECAR: リアルイムの細胞生体エネルギー学のための新しいアプリケーション

Oxytherm+RおよびOxygraph+測定システムの機能が拡張されました。この新しいアプローチにより、同じ実験内でpH変化を定量的な細胞外酸性化速度(ECAR)とプロトン産生速度に変換するシンプルなツールを使用して、酸素消費速度(OCR)と細胞外pHフラックスの両方を直接リアルタイムで測定できます。

詳細はこちらを参照ください。

ガラスPH電極と組合せたOxygraph+システムを使用した細胞酸素消費速度(OCR)と細胞外酸性化速度(ECAR)への新しいアプローチ

文献についてはこちらをご参照ください。

蛍光ベースのプラットフォームに対する優位性

高感度酸素電極とガラスpH電極(本研究ではHach Sension+ 5208 pH微小電極)を複合した本システムは、専用のアッセイマイクロプレートや高価なセンサーカートリッジを必要とする蛍光ベースのシステムと比較して、多くの利点を提供します 。

  • 直接的かつリアルタイムな測定: 蛍光法による間接的な計算に依存しないため、OCRやECARへの変換のための煩雑な滴定の繰り返しを最小限に抑えられます。また、実験中に結果がリアルタイムで可視化されるため、代謝応答を観察しながら動的に化合物を添加するなどの柔軟な実験制御が可能です
  • 柔軟なアッセイ設計とワークフローの簡素化: 事前にプログラムされた固定の注入シーケンスに限定されず、実験の延長や中止をオンタイムで判断できます。高価な消耗品や専用アッセイ培地も不要なため、運用コストが大幅に低減されます。
  • 包括的な生体エネルギー情報の取得: ミトコンドリア呼吸と解糖活性の挙動を同時に追跡できるだけでなく、蓄積された生化学の知識に基づくアルゴリズムにより、解糖および酸化的リン酸化(OxPhos)プロセスによる正確なATP生成速度の推定へと展開できます。
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図1 :HepG2細胞の酸素消費と細胞外pH変化の代表的な同時トレース

ソフトウェア OxyTrace+ によるデータ解析と自動計算

Oxytherm+R および Oxygraph+ システムに付属する独自ソフトウェア「OxyTrace+」を使用すると、測定された酸素消費量(図2)とpH値(図3)のトレースを個別に選択・検査することができます。これにより、任意の時間間隔における変化率の自動計算が容易になります。

さらに、統合された「HCl滴定分析機能」により、ECARから生物学的に意味のあるプロトン産生速度への変換が自動化されます。ユーザーがグラフ上でHCl滴定が実行された正確な点を選択するだけで、ソフトウェアが滴定後のデルタpHと緩衝能を実験条件に合わせて自動計算し、手動計算の手間を大幅に削減します。

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図2・3:酸素消費およびpH値の個別の選択表示画面

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図4:酸素濃度・pHと、計算されたOCR・ECAR変化率の比較表示画面

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図5:速度カーソル機能を用いた時間間隔の定義とレート計算手順

HepG2細胞を用いた代謝ストレステストでの実証

新方法論の検証として、37℃のDMEM中で増殖させたHepG2細胞(300万〜500万個)を用いて、古典的な生体エネルギー調節因子に対する応答を監視するストレステストが行われました。実験のトレースから、以下の代謝変化がリアルタイムで連続的に観察されています。

  • オリゴマイシン(oli: 1μM)添加: ATPシンターゼを阻害すると、ミトコンドリアマトリックスへのプロトン再流入がブロックされ、ミトコンドリア膜電位の急激な上昇により酸素消費速度(OCR)が減少します。このとき細胞は解糖系を亢進させてATP減少を補おうとするため、代償的変化として細胞外酸性化速度(ECAR)が刺激・増加します。
  • FCCP(1μM)添加: ミトコンドリア内外のプロトン勾配を平衡化させる脱共役剤を添加すると、膜電位が消散し、刺激された酸素消費速度(OCR)が回復し、細胞の最大呼吸能力が明らかになります。
  • ロテノン + ミクソチアゾール(rm: 各1μM)添加: 電子伝達鎖(ETC)の複合体IおよびIIIをそれぞれ阻害すると、ミトコンドリア呼吸に由来するOCRは完全に阻害されます。一方、残留するECARは、細胞が解糖系ATPを利用して生存し続けていることを明瞭に示します。
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図6:HepG2細胞における古典的な代謝調節因子に対するOCRおよびECARの応答波形

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図7:HepG2細胞のOCRおよびECARストレステスト

結論と今後の展望

実験結果においてECAR率(主に解糖による)がOCR(ETC活性)を上回ることから、HepG2細胞は一見して主に解糖性の特徴を持つことが示唆されます。しかし、生化学的知見を基により適切なパラメーターである「ATP合成効率」を考慮すると、これらの細胞はOxPhos(酸化的リン酸化)活性によって生成されるエネルギーに生存を大きく依存している(解糖系の約2倍のATP速度を有する)ことが判明しました。このように、OCRまたはECAR単独の評価よりも、両者を正確に並行追跡しATP生成速度へと昇華させることが、細胞のエネルギー効率のより真に意味のある尺度を提供します。

参考文献(References)

  • Lofrumento, D. D., Lofrumento, C., & Lofrumento, N. E. (2026). A new approach to cell Oxygen Consumption Rate (OCR) and Extracellular Acidification Rate (ECAR) using the OXYGRAPH+ DiSTeBA system combined with a glass pH electrode. University of Salento Report.
  • Hansatech Instruments Ltd. Application Note: Simultaneously Measurement of OCR and ECAR Using the Oxytherm+R and Oxygraph+ Platforms Equipped with an Integral Glass pH Electrode.

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